高松家庭裁判所丸亀支部 事件番号不詳 判決
被告人 今田信子
主文
被告人を罰金五千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
罪となるべき事実
被告人は肩書住居において飲食店「大勝」を営んでいる者であるが、かねて仲居として雇入れていたR子(昭和一六年一月一三日生)につき年令確認の方法をとらず昭和三三年三月下旬及び同年四月二日頃の二回に坂出市駒止町「つた茂旅館」において遊客Oを相手方に売淫をなさしめもつて満十八歳に満たない児童に淫行をさせたものである。
証拠
一、被告人の当公廷での供述(但し判示に照応しないR子の年令についての不認識の点及び同女に淫行させたのでない旨の供述部分を除く。)
一、証人R子の当公廷での私は判示の「大勝」の仲居として昭和三二年一〇月一五日から住込み働いているが、昭和三三年三月二五、六日頃被告人の紹介で坂出市駒止町の「つた茂旅館」へ、被告人とO外一名と行つて飲んだあとOと泊り肉体関係をし、その際Oから二千円貰つた。
又同年四月二日頃の午後九時頃「つた茂旅館」の仲居が私を呼びにきて「坂出に今居るOが貴女に来てくれとのことであるから迎えに来た」と云つたので、私はマダム(被告人)に「顔だけでも出してくる」と云うと、マダムは「早く帰つてくれ」と云つた。そこで私は「つた茂旅館」に行つてOと肉体関係を結び、同人から千円貰つた旨の供述。
一、証人Oの当公廷での私は昭和三三年三月二五、六日頃被告人が営業している「大勝」で飲んでから被告人が「坂出の知人がやつている旅館に行こう」と云つたので同女及びR子その他と「つた茂旅館」に赴き一緒に飲んだ。同夜は同所でR子と泊つた。
翌朝車賃名義で二千円を同女に支払つた。その後坂出で飲んだときもR子を「大勝」から呼び出して「つた茂旅館」で一緒に泊つたが、そのときは千円を同女に渡した旨の供述。
一、証人森本キヨ子の当公廷での私は「つた茂旅館」の仲居である。被告人(マダム)O外二名は昭和三三年三月頃の夜十二時過、右旅館に来たが、OとR子とは同夜泊つた。同年四月二日頃Oに頼まれ「大勝」からR子を呼び出し一緒に「つた茂」に連れて行つたことがある。R子はそのとき、被告人に何か耳うちをしていた旨の供述。
一、証人西岡チヨヱの当公廷での私はつた茂旅館主であるが、昭和三三年三月二四、五日頃被告人、R子、Oらが夜一二時過ぎ私の店に来た。R子、Oの二人は同夜同所で泊つた。その際被告人は私に「Rちやんは二階に置いておきますから頼みます」と云つた。
次に四月二日にR子を坂出市内のバーから呼び入れてOを交えて飲んだが同夜もOとR子とは泊つた旨の供述。
一、司法巡査のOに対する昭和三三年一一月四日及び検察官の同年一一月二六日付各供述調書。
一、埼玉県○○○郡××村役場作成にかかるR子に関する身上調書。
法令の適用
児童福祉法第三四条第一項第六号第六〇条第一項第三項刑法第一八条刑事訴訟法第一八一条
被告人並に弁護人の主張についての判断
被告人並に弁護人は、被告人はR子をしてOと淫行させたことはないと主張するが前示各証拠を具さに検討するときは、同女が判示のように淫行するについての機会と場所を与えたと認められる事情が推認できるのであつて、この事実の存する限り、仮令被告人において格別の利益を得なかつたとしても本罪成立の要件たる淫行をさせたものに該当するものと判断すべきである。
次に被告人並に弁護人は判示R子が満十八歳に足りないことは知らなかつたと主張する。しかし児童を仲居として住込ませるような場合には本人の外貌、体格からは必ずしも真実の年令を確定しうるものではないのであるから、業者としてはそれ以上進んで年令確認について戸籍謄本その他の資料により正確な調査をなすべきにかかわらずこれらの処置を執らなかつたことが認められる以上、いまだもつて被告人に年令確認につき過失がなかつたものとは云うことができない。
以上のとおりであるから被告人並に弁護人の主張はいずれもこれを採用しない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 萩原敏一)